ずっといっしょに

胃癌サバイバーの旦那様をサポートするブログ

私自身の体験。同室患者のふるまいや言葉から受けたストレスと動揺。

水色で描かれた陰陽のマーク

今回は私の入院時の思い出話です。

ちょっと長いけど今も自戒としているので書いておこうと思います。

それは今から10年以上前のこと。

私は婦人科系の病気を悪化させて入院しました。検査の結果、開腹手術が必要なことと、また癌である可能性もあるけど、開けてみなくちゃわからない!というなかなかヘビーな状況での入院でした。

もう、お腹の痛みも酷くて、早く何とかして欲しいという気持ちで、自分のことだけで精一杯という状態でした。

 

この、自分に夢中!という状態のお陰で、後ほど私は色々と助かるわけなんですけども...。

 

私が入院した翌日に隣のベッドに年配の方が入院して来ました。その時私の主治医が

「仲良くしてあげてね」「すぐ周りの人に苛められて気にしちゃう人だから」とこっそり声をかけられました。

 

入院患者同士の苛め。なんて嫌な話だなと思いました。

 

お隣の方は、おしゃべり好きでした。

ですが、私は自分に夢中。ひたすら苦痛を耐えていたので、正直、話は頭に入らないので、相槌するのも辛くて「そーですかー、そーですかー」しか言えなかったので、話し相手にもなってなかったと思います。

 

ようやく手術の日を迎え、朝から術着に着替えて帽子をかぶり、麻酔がよく効く注射(?)を打ってストレッチャーに乗せられた時、担当看護師さんがちょっと席を外しました。

その時です。

お隣さんが、ベッドから起き上がり私に向かって

 

あなた、癌なんでしょ?

 

と、聞いてきました。

私は答えに窮しました。それについては私も気にはなりましたが、現時点では悩むことではないと気持ちの整理をして、手術に向かおうとしていたからです。引き出しにしまっていた案件を勝手に開けられた様な。不意打ちでした。

お隣さんは言葉を続けました。

 

「癌はね、手術したら、すぐ死ぬのよ。」

 

 

 私は一瞬言葉の意味がわからずに凍り付きました。

お隣さんは私が反応しないので、さらに言いました。

 

あなたはすぐ死ぬんだからね

 

笑いながら、その人は重ねてそう言いました。

 

「待たせてごめんねー、さあ、行きましょう」

看護師さんが戻ってきて、私はストレッチャーごと運ばれていきました。主人も駆けつけてくれ、この後たった1人で8時間、私のことを待っていてくれました。

 

で。現在、私は絶賛生存中なわけですが。

 

お隣さんは、抗がん治療で度々入院してるものの手術はしてないんだそうです。(本人が何度も言ってました)今までも同室の人が手術すると分かると、私に言ったようなことを告げていたのかもしれません。

 その影響も顧みずに。人の気持ちなどおかまいなしに。

 

そりゃ苛められるわ。いや、苛めじゃない。ただ、言い返されただけでしょう。

お前は死ぬけど私は大丈夫なんだから!と。

不安なあまり、誰彼かまわず、言わずにおられなかったのかもしれません。お前も言い返せよ!言われっぱなしかよ!と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 わかる。むしろ、それ、わかる。共感できる。

でもね、私、手術前も、後も、もぉ、ほんっっっとお腹痛くて、手術痕が痛くて、高熱出て、血圧バンバン下がって、血圧低すぎるから痛み止め打てなくて、とにかく辛かったから、どんだけ死ぬぞ死ぬぞと言われても、たった今地獄なんですけど!って感じで、もぉ、こんな婆、どーでもいいっていうか、飛び回るハエくらいにしか思ってませんでしたから。そんなわけで私のココロは守られたわけです。

 

そしてあれから10年の月日が流れて。

いまでも大きな病院に行くと思い出してしまいます。

あの頃はお隣さんのことを意地の悪い人と思っていました。でも今はあの人は悪意はなかったんじゃないかと思っています。ただ病気が怖くて、ごくごく自然に自分が優越感に浸るためなら、なんでもできるよーになっていったんじゃないかと思えるのです。

 

自分に夢中にならなきゃ病なんて乗り越えられません。でも、出来るのなら人を踏み台にするよーな真似だけはしたくないと思います。

 

私にとってあの経験とあの人は、偉大なる反面教師として、生涯覚えていようと思っています。