ずっといっしょに

胃癌サバイバーの旦那様をサポートするブログ

退院直後は喪失感しかなかった夫が自ら見つけた回復方法は家の掃除

小さな観葉植物の鉢が2つ

3回目くらいの抗癌剤治療の休薬期だと思いますが、主人は身体から薬が抜け、だんだん動けるようになると率先して部屋の掃除をしてくれるようになりました。

夫の「女子力」が予想しないほど高かった件

しかも、日に日に手際が良くなり、テーブルも椅子も一度廊下に出して丁寧に掃除機をかけるという念の入れよう。大きなラグも外に出して叩いて日に干してフカフカ。細やかさと機動力ですっかりお部屋はピカピカになっていきます。

掃除機をかけるときに、邪魔だと感じたらしく室内の電源コード等もキレイにまとめ上げ、隅々まで「行き届いた」お部屋になっていきました。 

元々、家事は全て私が担当しているので、最初は掃除機の扱いすら不安定でしたが、めきめき上達していく掃除力に思わず

 なに?この女子力。

新たな才能をみるような思いがしました。

 

ふさぎ込む時期を抜けて育った「囚われる必要はない」という想い

 

退院後、夫はまるで石のようにじっとして過ごしていました。もちろん開腹手術後なので身体がつらいということもあったと思いますが、とにかく動こうとしませんでした。好きだった読書もすることなく、ただじっと、退院後用意したリクライニングチェアに座り続け、苦悶というか、なにかに耐える表情しかみせませんでした。

後から聞いた話ですが「退院直後はただ喪失感ばかりだった」といいます。

もうなにも食べたくない。

腹だって空かないんだよ。

食べるとつらいことばかり。

もうなにもいらない。

その頃の主人が私に言った言葉です。

 

抗癌剤治療3回目の休薬期。何がきっかけなのかはわかりませんが、突然夫は動き始めました。

治療が生き甲斐になっちゃダメだ

囚われる必要はないからね

そんなことを話してくれる様にもなりました。

最初は大好きな読書の復活。近所のコンビニで買い物。そして軽い散歩。少し距離を伸ばした散歩が出来るようになると、家の中にも目を向け始めました。瓶や缶の種類分け。朝のゴミだし、そして掃除機をかけはじめました

 喪失感ばかりを感じ、動けなかった夫が創り出した行動するチカラ。

 

彼が行うと家事というよりも任務遂行という雰囲気に見えます。

掃除の手順、その範囲も日増しに増えていき、わたくし、結婚以来、こんなに楽したことはございません。 ただ、手足症候群予防のため洗剤は絶対触っちゃダメ!と釘をさしているので水場にだけは彼の勢力図に入れられてはいません。でも、本当に大助かりです。

彼の心の変化、動き出そうとしたきっかけは私には解りません。

もしかしたら今後、そんな想い出を聞けたらいいなとも思います。彼を見ていて感じていることは、回復するための鍵は当事者本人しか持っていないのではないか?ということです。

ことわざでも言うところの「天は自ら助くる者を助く」というやつです。

掃除を始めた夫は徐々にですが、快活になりました。食事も楽しむようになりました。掃除に必要なグッズを今度は車の運転をしてホームセンターまで買いに行き、そのついでに晩ご飯の買い物までして、私を迎えてくれるようになりました。

活動量が増え、食事の量も増え、笑顔も増えました。

お腹空いた

おやつにおにぎり食べたい

そう、声をかけられた時は、一瞬、耳を疑いました。

涙が出ました。

大きいおむすびと小さいおむすびの写真

 

掃除というきっかけを夫は自分で見つけました。行動自体は「転がってるゴミをヒトツ拾ってみたら、もうヒトツ落ちてるのに気がついた」ようなことだったのかもしれません。家事をされる方はおわかりになると思いますが、家事にはキリがない。やってもやっても完成がない作業です。それがよかったんだと思います。

夫は次々と「発見」し続けて自分の行動を創っていったのではないか・・・と、これは私の勝手な想像ですが。

 

病は人の心まで侵略できない このことだけは確かなのではないかと思います

 

治療期間が終わって、彼が職場復帰したら我が家の掃除のクオリティは下がったと感じるかもしれません。日々スキルを上げてくる夫の女子力に焦りを感じる主婦でございます。