ずっといっしょに

胃癌サバイバーの旦那様をサポートするブログ

結果を出すだけが仕事ではない。病が私達から絶対に奪い取れないもの

 

相方のスマホからチリンって小さな音がする。

リマインダーの音。

 

あー、今日だった。

 

誰に言うともなく寂しそーにそんなことを言う。

2年間も時間かけてコツコツ積み上げてた、

彼の研究成果の発表会の日のことだった。

 緑の庭に白い椅子

相方が癌になってから置いてきたモノ

 体調崩しても、歩けないほどになっても

彼はギリギリまでタクシーに乗ってお仕事に行ってた。

あの時期に彼の立場的に、やり遂げなくてはならない案件は

骨身もそれこそ、胃袋も削ってやり遂げた。

 

そして、彼自身がやり遂げたかった研究は

他の人に委ねなければならなかった。そして今日が研究発表会。

本当なら彼がビシッと決めてくるはずだった。

 

仕方ないよなー、と。

その日、相方は本当に珍しくボヤいた。

 

病はその人から時間とチャンスも奪う。

命とどっちが大事なんだよというのは、やっぱり愚問にも思える。

打ち込んだものを持っている人にとってはどっちも欠かせない。

 相方は、その研究をホントはどうしても仕上げたかったんだろうなと

痩せちゃった背中を見ながら私も切なかった。

 

結果出すことだけが仕事ではないと感じた理由

 そんなことがあって.しばらく経った後に彼は1人で散歩に出て行った。

休薬期の時はたくさん歩けるから本屋街まで足を伸ばして、

ブラブラとしてたんだそーだ。

 

急に背後から大声で呼び止められて振り返ると、彼の職場での後輩が人が笑ってた今は別々の所属になりどーしてるかなとは思ってたけど連絡は取ってなかったそう。

 

久しぶり...と、言った後に

さて。

職場の上司に当たるヤツが、平日、真昼間、仕事もしないでブラブラ

完璧にヨレヨレっとした日曜日スタイル

さらに自分は体重15キロ減。

さあ、なにから取り繕う...と相方は一瞬言葉に詰まってしまったそうな。

 

そしたら、後輩くん。

自分が今年の春、つまり彼が入院した頃に会社辞めて、かねてからやりたいと思ってた

海外での就職が決まって、来週はもう出発するんだ、その準備で買い物に来たと

一気に語り

 

病気のこと、聞いてます...と、言ったんだそーな。

 

後輩くん、ずっとやりたいことがあって。

上司の立場でもある相方がそれを理解してずーっとサポートしてたんだって。

いつか、叶うと応援しながら。

 その人は、そのおかげと言うけど諦めないで努力されたから叶ったんです。

 

見事に希望が叶って。

嬉しくて嬉しくて。

相方に、知らせに行ったら

すでに休職していて

手術のことを聞いて。

 

逢いたい。お礼が言いたい。報告したい。

なんで癌?

もう来週は飛行機乗るのに!で、歩いてたら目の前に居たと。

 

もう、顔、ぐちゃぐちゃ。

夢だと思ったんだそーな。

2人でそのままお店入ってコーヒー飲んでいろんな話をしたという。

 

読みかけの本とクッション

まあ。よかったな。

 

ものすごーく、照れ臭そうに、ものすごーく、嬉しそうに

相方はそう言ってました。

 

仕事を休んだせいで途切れたものもあるけど。

きっと利益になることばかりが「仕事」ではなくて。

職業人としての振る舞いが人を後押ししたり、よい影響を与えていたんだとしたら

本当にすてきだよね。

 

よかったね(*´꒳`*)

妻は誇らしくなりましたとさ。